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僕は那美過第一小学校、第三十回卒業生、六年の同窓会で、世話役をしている。
那美過第一小学校、六年の同窓会は、いつも欠席をしていた。
五十歳を過ぎた頃から、小学校時代が懐かしくなり、出席するようになった。それ以降は、数人いる世話役を、引き受けている。
地元の法律事務所で金曜の夜、世話役の集まりがあった。女性弁護士の本田さん。旧姓は村田さんの事務所だ。
僕が提案して、卒業文集ならぬ、小学校の思いでを振り返えり、文集を書くことを提案した。名前は“卒業の記憶及び、卒業後文集”だ。
ほかの人は忙しく、僕一人だけが書いて、同窓会当日、先生にお渡しすることになった。
帰宅して、小学生気分に戻り、当時を思い出しながら、卒業文集の委員になった思い出を書く。
***
僕は、那美過第一小学校六年一組、奥村崇高。
夏休み明けに、担任のひなこ先生から、僕だけが職員室に校内放送に、呼び出されました。また何かを叱られるのかと、思いました。
「奥村君に卒業文集の委員をして欲しいの」
「先生、分かりました」
ひなこ先生から、原稿用紙の束を渡されました。ひなこ先生の背中を追いかけながら、廊下を歩きます。
教室に先生と一緒に入ります。着席しているクラスみんなが、一斉に僕の顔を見つめます。ひなこ先生と一緒だからでしょう。とても緊張しました。
教卓近くで、先生がみんなに話します。
「みんな聞いてね。奥村君が卒業文集の委員に立候補してくれました。卒業文集を書いて、一週間後までに書いて、奥村君まで提出してください」
立候補でなく指名されたのに、ひなこ先生は、僕に顔だけを巡らせながら、微笑みかけます。
「みんな、卒業文集を書こう!」
僕は声が震えました。
「奥村君大変だろうけど、頑張ってね。先生が原稿用紙を配るから、自分の席に戻って良いよ」
「僕が配ります」
「偉い!」
一番前の席に座る人に、後ろの席の人数を自分で数えながら、原稿用紙を渡して行きます。
原稿用紙は後ろの席まで、クラスメイトが手渡しでまわって行きました。
「先生、原稿用紙がありません」
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