15人が本棚に入れています
本棚に追加
前もって、予約してある那美過市駅近くの飲食店に車で行く。僕は、お酒を飲まないのだ。僕は帰りは、お酒を飲んだ人を、駅などに運転する係になる可能性が大きい。
大きな個室に数十人が集まる。コの字にテーブルが並んでいる。上座は先生の席だ。
開いた扉から、たつろう先生が入ってきた。僕が最初に気づいた。
「たつろう先生だ!」
『だ』は余計だった。たつろう先生を、上座に案内する。
「ひなこ先生!」
本田さん、旧姓・「村田さん」。(以下「村田さん」という。)が小学生のように喜んで叫びながら、ひなこ先生を上座に促す。
司会は村田がしてくれた。乾杯の挨拶は、たつろう先生とひなこ先生だ。
毎年、たつろう先生も招待しているのだが、理由は聞けない。
同窓会も終わった。楽しい時間は過ぎるのが早い。
外に出れば、夏の蒸し暑さが残っていた。駅近くのお店だったので、多くの同級生は、電車や駅前のタクシー乗り場から、帰って行く。駅前のハンバーガーショップで、たつろう先生、ひなこ先生、村田さんと、僕だけになった。
「奥村さん、先生たちにお手紙書いたんでしょう」
忘れていた。渡す状況を村田さんが、用意してくれたのだ。そそくさ、バッグから卒業の記憶及び、卒業後文集を取り出して、両手で差し出すが、どっちの先生に渡すか、迷っていた。
「先生どうぞ」
テーブルに置いて、たつろう先生が、笑いながら読み始めた。たつろう先生が、ひなこ先生に渡す。
ひなこ先生は目を輝かしていたが、時折、首を傾げながら、文集を読んでくれた。たつろう先生と、ひなこ先生が目配せして、笑っている。
たつろう先生が提案する。
「どうだろう、これから、小学校に四人で行かきませんか?」
「奥村さん、時間大丈夫ですか?」
村田さんが、酔いで少し火照った顔を僕に巡らす。
「僕が運転して行きます!」
店を出て、駐車場で僕も含めて四人が自家用車に乗り込む。
「道案内は、本田さんお願いしますね」
ひなこ先生の声が背中でする。村田さんが告げる。
「奥村さん、次の信号右です」
「え?」
那美過第一小学校は、通り越してしまった。おかしいな、通った学校の場所、村田さん、間違えてないか。
最初のコメントを投稿しよう!