小学校、卒業の記憶及び、卒業後文集。

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 前もって、予約してある那美過(なびか)市駅近くの飲食店に車で行く。僕は、お酒を飲まないのだ。僕は帰りは、お酒を飲んだ人を、駅などに運転する係になる可能性が大きい。  大きな個室に数十人が集まる。コの字にテーブルが並んでいる。上座は先生の席だ。  開いた扉から、たつろう先生が入ってきた。僕が最初に気づいた。 「たつろう先生だ!」 『だ』は余計だった。たつろう先生を、上座に案内する。 「ひなこ先生!」  本田さん、旧姓・「村田さん」。(以下「村田さん」という。)が小学生のように喜んで叫びながら、ひなこ先生を上座に促す。  司会は村田がしてくれた。乾杯の挨拶は、たつろう先生とひなこ先生だ。  毎年、たつろう先生も招待しているのだが、理由は聞けない。  同窓会も終わった。楽しい時間は過ぎるのが早い。  外に出れば、夏の蒸し暑さが残っていた。駅近くのお店だったので、多くの同級生は、電車や駅前のタクシー乗り場から、帰って行く。駅前のハンバーガーショップで、たつろう先生、ひなこ先生、村田さんと、僕だけになった。 「奥村さん、先生たちにお手紙書いたんでしょう」  忘れていた。渡す状況を村田さんが、用意してくれたのだ。そそくさ、バッグから卒業の記憶及び、卒業後文集を取り出して、両手で差し出すが、どっちの先生に渡すか、迷っていた。 「先生どうぞ」  テーブルに置いて、たつろう先生が、笑いながら読み始めた。たつろう先生が、ひなこ先生に渡す。  ひなこ先生は目を輝かしていたが、時折、首を傾げながら、文集を読んでくれた。たつろう先生と、ひなこ先生が目配せして、笑っている。  たつろう先生が提案する。 「どうだろう、これから、小学校に四人で行かきませんか?」 「奥村さん、時間大丈夫ですか?」  村田さんが、酔いで少し火照った顔を僕に巡らす。 「僕が運転して行きます!」  店を出て、駐車場で僕も含めて四人が自家用車に乗り込む。 「道案内は、本田さんお願いしますね」  ひなこ先生の声が背中でする。村田さんが告げる。 「奥村さん、次の信号右です」 「え?」  那美過第一小学校は、通り越してしまった。おかしいな、通った学校の場所、村田さん、間違えてないか。
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