ほっとホスピス第一話

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ほっとホスピス第一話

短編小説集「ほっとホスピス」を書いてみたいと思います。 どれだけの事が出来るか分かりませんが、 ホスピスを舞台にして、新人の看護師がいろいろな人生にふれて 成長していく物語を紡ぎたいと思います。 重いテーマですので、出来るだけファンタジーの要素を入れた作品にします。 真剣に取り組みますので、ご一読頂ければ幸いです。 ------------------------------ 君はもう少ない生きる力でベッドに横たわっている。 あまりにも早い10歳でもういのちを失いかけている。 これは宿命なのでどうしようもない事だけど、 やはり悲しすぎて、でも私はプロの看護師なので、 ちゃんとしなくてはいけなくて、とまどいながら点滴を変える。 いい子だ。自分もすごくつらいのに、4歳の女の子と友達になって、 きっとしんどいだろうけれど、輪投げをしたりして遊んで、 一緒に海の絵を描いて、そしてその子を笑顔にしていた。 今その子は眠っていて、彼女の事はたぶん分かっていない。 でも、確実に彼女の命は終わりに向かって今ベッドの上にいる。 お母さんはもう何も言えなくて、ただ泣くばかりで、 何も言えない。 私は新人でこのホスピスに入ってまだ1か月目で、あまり役にたっていないと思う。 死に直面するの初めて。 ふるえるくらいこわい。 「ねえ、由衣ちゃん、つらくない?」 そう話かけてあげるのが精一杯で、右の手のひらを強く強く握った。 ただそれしか出来なかった。 そのぬくもりは確かなもので、 そしてせつなくて、愛おしくて、時間だけが過ぎるのを感じる。 4c6393e6-c09f-4fe3-8f29-063023796207彼女は「虹を見たいの」と小さくつぶやく。 何か特別な思いでがあるのだろうか。 夜だし当然虹など見えるわけはないのだけれど、 彼女は3回同じ事をつぶうやいた。 私に出来る事。 もうほとんど何も出来ない。 そっと、幼い頃信じてた神様にお願いをしてみた。 そしてびっくりする事に奇跡が起こった。 病室の窓をたたくような音がして、夜空を見上げると そこにはありえない虹がかかっていた。 それは綺麗すぎて。 もうほとんど動けなくなった彼女に虹を見せてあげる。 「すごく素敵、綺麗」そうつぶやいて彼女は静かに目を閉じた。
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