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薔薇の言葉
二人の言葉の鈍色の塊が
部屋の真ん中で動けなくなって止まっている
時計の針は動いているけれど
テーブルの上に置いてある色がない薔薇の上で
その鈍色の塊はそこで動けないでいる
私たちは、最初使っていた言葉を失くしてしまった
どうしようもなくなって私は最初の頃の言葉を使いはじめた
それは、まっすぐで一生懸命で透明でいじらしくてぎこちなかった
でもそんな言葉たちは私たち二人を確かな力で強くつないでくれていた
私はあの頃の言葉を彼に投げ続ける
あなたは今使っている言葉を私に放つ
それは交わることもなく
行先を失ってあの鈍色の塊に吸い込まれる
もう駄目かもしれない
あきらめかけて泣きそうな顔になっている私に不意打ちのように
好きだよ、とあの頃の使っていた言葉を贈ってくれた
その瞬間あの不思議な鈍色の塊は消えてしまった
机の上の薔薇の花の色が変わった
あの時あなたにもらったのと同じ色の赤い薔薇の色に
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