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手がちぎれるほどバイバイして
「手がちぎれるほどバイバイして」
「来月、私あなたの前から消えちゃう」。
苺パフェ食べながらいきなり君は僕に言う。
「ものすごく治りにくい病気で、ノルウーイの病院に入院する。だからもう、会えなくなるよ」
「えっ」
僕は何の事かわからなかった。
「マジ、どういう事」
幼馴染の華。僕の2軒となりに住んでいる。原っぱで日が暮れるまで、遊んで母さんに大目玉をもらったり、一緒に泣いたり。そんなつきあいで今18歳。高校までは一緒だったけど、大学は別。僕は理学部。華は看護学部。看護師になりたいと。
17歳の時、ひょんな勢いで、夏祭りの夜、キスをした。
「何なの、これって」彼女は文句を言う。
「うん、ずっと華が好きだったかも」
「何言ってるの、それないでしょ」。
ほっぺを思いっ切り膨らませる。
「なんなんだろう、華が好きだと気が付いた」。
「バカ」」。
「バカというお前がバカ」
それから二人の日記は始まった。
すごくてれくさく、でも愛おしく、春、夏、秋、冬、二人で過ごした。
どんなにいやな事があっても、手を繋げば、消える魔法。
僕たちは、確かにそこにいた。
青春という季節の全部。
「おい、ノルウェイはないだろ」
「ごめんね、私死んじゃうかも。でもあと少し一緒にいられるよ、何しよう?」
「そんなの…」。
「いいじゃない、そうディズニーランド行った事なかったね、行こうよ」
「うん、いいけど」
「ミッキーとミフィの帽子かぶろうよ、でも写真撮るのはやめよう」。
「何で」
「うまく言えないけど、そうしたいの」。
今、成田空港にいる。
少し厚めのセーターを着ている華。
「ねえ、最後のお願い。思いっ切り、手がちぎれるほど、バイバイして」
「そんな」
「じゃ」。
茜色の空に、飛行機は飛び出す。
ただ、何も出来ずにそこにたたずむ。
ノルウェイか、行けるな。
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