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秋が深まり、幼馴染は穴を掘る
手から放たれた紙飛行機は、すっかり高くなった空へ吸い込まれるように上昇し、大きな放物線を描いて草むらの向こうに消えていった。
「イテッ!」
やがて紙飛行機が落ちたであろう方角から小さな悲鳴が聞こえた。どうやら私の飛行機が墜落事故を起こしたらしい。私は、謝りながら声のする方へ駆け寄った。
草むらの陰を覗くと、そこには赤や黄に色付いた落ち葉の絨毯が広がり、さらに進むと平たい地面にぽっかりと暗い穴が開いていた。その穴からひょっこりと紙飛行機を持った手が現れた。
「また君か」
そんな声と共に、幼馴染のきぃ君の呆れた顔が現れる。
「いい加減、僕の邪魔をしないでくれる?君の紙飛行機を拾うのも、これで5回目なんだけど」
ブツブツと文句を言いながらも、彼は穴から出て紙飛行機を手渡してくれた。
「だいぶ深くまで掘ったんだね」
お礼を言ってから、私は地面に開けられた暗闇を覗いた。
「そりゃあ、毎日続けてるからね。明日からはロープも持ってくるよ」
胸を張る彼の横には、大きなシャベルと土を掻き出す用のバケツが転がっていた。穴は、大人が一人入れるくらいの幅で、私達の身長と同じくらいの深さになっていた。落とし穴にしては、狭いし深さがあって危なそうだ。
「落とし穴?そんなつまらない物の為に僕がこんなに時間をかけると思う?」
彼は心外だと不満げに腕を組んだ。
「じゃあ、きぃ君は何の為に掘ってるの?」
てっきりイタズラの為に穴を掘っているものだと思っていた私は、驚いて質問し返した。彼は、よくぞ聞いてくれたとでも言うように片頬を上げてこう答えた。
「地球の裏側に行くためだよ」
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