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訪れ
高校時代の恋人である麻里が死んだと知ったのは冬が深まった二月のことだった。
私はトレンチコートの襟を立て、白い息を吐きながら都会の雑踏を歩いていた。
新幹線に乗り込み、故郷の山間の村にたどり着いた。
駅前は寂れていて人気がなかった。
麻里と駅の古びたベンチで並んでいたことを思い出す。
麻里は何で死んでしまったのだろうか。
麻里が亡くなったのは交通事故だったそうだ。
私と麻里が出会ったのは高校の入学式だ。一番前の席にひときわ美しい女性がいるのを見つけた。
一目ぼれだった。
狭い町であるのに麻里の存在は高校に入るまで知らなかった。
私と麻里は同じ弓道部になり、偶然同じ部活になれたことをうれしく思った。
麻里は何をやるにしても完璧な女性で部活でも学業でも優秀な成績を収めた。
麻里と付き合うようになったのは三年生の部活動が終わった時だった。
県大会で敗れてしまい、麻里と帰り道を歩いていた。
私は今でも自分がなぜそうした行動をとったのか理解できないのだが、麻里に告白をした。
麻里と付き合えるなどと思っていたわけではなかった。
麻里の答えは意外なものだった。
「私も好きだったの」
麻里の言葉に動揺が隠せず、しばらく言葉を発することができなかった。
それから私と麻里は付き合うようになった。
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