Shadow

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「……いやいやいやいや!ありえないよ、そんなこと!! だって、私だよ!?あんな凄い人が、私なんか好きになるはずないよ!!」 「じゃあ、綾崎君が他の誰かと付き合ってもいいの!?」 「……そんなの駿の自由だよ。私がとやかく言うことじゃないもん」 そう答えたものの、即答できなかったのはどうしてだろう。 放課後。 掃除が終わると急いで靴箱へと向かった。 靴箱に背を預けて立っている駿に声を掛ける。 「駿、お待たせ」 「全然待ってないよ」 いつもと同じように他愛ない話をしながら帰路につく。 ふと、家の近くにある公園の茂みに目が止まった。 「ここの公園も昔のまま変わらないね。 あの茂み覚えてる?私が失くしたストラップ駿が見つけてくれたんだよね」 「よく覚えてるね」 「うん、覚えてるよ。 だって、駿はいつも私が困っていると駆けつけてくれたもの。 物を失くした時や、いじめられた時、学校で他の子の工作を壊した犯人にされた時も守ってくれた」 いつだって私の隣にいて、大丈夫だと手を握ってくれた。 「ずっと変わらずにいたいな」 「────………」 微笑んでそう言うと、途端に駿が無言になる。少し落ち込んだような冷えた雰囲気にあれ?となる。 「駿?」 「…本当に?」 「え…?」 「本当にそう思う…?」 いつもと違う彼の雰囲気に戸惑う。前髪がさらりと額を隠して、顔に陰が掛かる。 ゆっくりと上げられた視線が私の視線を絡め取る。 『綾崎君って、涼のこと好きなんじゃないの?』 花音の言葉が頭に浮かぶ。 「あ…あの、駿…?」 「……ごめん。何でもないよ」 にこりと笑っていつもの彼に戻る。 「涼ちゃん、帰ろ」 彼はそう言って手を差し伸べてきた。 手を握るのは低学年以来だ。久々に手を重ねると、彼の手は私の手を包み込めるほど、大きく成長していた。身長だって私より頭ひとつ分大きい。 ほとんど変わらなかったのにな。 そんなことを思いながら、他愛ない話を再開する。 変わらない。ずっと変わらないものだと思っていた。 でも、今手を繋いで心の奥がじんわりと温かくなるのはなぜだろう。
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