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「ちょ、ちょっと待って!」
舞い上がりそうになる気持ちを、自分に言い聞かせるように駿の言葉を止める。
「秋野さんとなら付き合ってないよ。告白はされたけど断った。
僕が好きなのは昔から変わらない。君だけだ。
涼ちゃん、君は?君は、僕のことどう思ってる?」
頬に伸ばされた手が優しい。
この温もりを、駿の隣を、ひとりじめできる?これからも駿の隣にいられる?
「私も…。…私も駿が好き。
駿の傍にずっといたい」
幸せを噛み締めるように、少し泣きそうな顔で彼は微笑む。
「やっと、やっと伝わった。
もう二度と離さない」
彼は甘い声で私を抱き締める。
「うん。離さないで」
そう言いながら抱き締め返す。
「一生、逃がさないよ」
そう言って、彼は私の唇に甘い熱を落とした。
教室に戻ろうとした涼を、「頭を打ったんだからもう少し安静に」と言い聞かせてベットに戻した。
今では規則正しい寝息を立てている。
さらりと落ちた涼の前髪を指で掬いながら駿は片方の口角を上げて微笑む。
「やっと、やっと手に入れた…」
誰にも奪われないように、大事に大切に守ってきた女の子。
周りをけしかけ彼女をいじめさせたのも、涼の私物を隠したのも、犯人に仕立てあげたのも、すべて自分を頼らせるため。
「あーあ。自覚させようと思ってわざと距離を取ったのに、それを秋野に利用されるとはね。しかも、付き合ってるって涼ちゃんに嘘つくなんて。
どう懲らしめてやろうか」
涼ちゃんを傷付けるのは誰であろうと許さない。
彼女を傷付けていいのは、泣かしていいのは、僕だけだ。
ピコン!と涼の携帯が通知を鳴らす。
相手は涼の友達の『花音』と、涼に告白をしていた『高岡』だった。
「この二人も邪魔だなぁ。
花音のおかげもあって涼ちゃんと付き合えることになったから、今は何もしないけど。これからも涼ちゃんに付きまとうようなら排除しないと。
高岡は徹底的に潰しておかないとね」
「しゅ…ん…」
涼がうわ言で駿の名前を呼ぶ。
それに甘い笑みがこぼれる。
「涼ちゃん、待ってて。
君と僕の邪魔をする奴はすべて排除してあげる。
君を理解してるのも、助けてあげられるのも、僕だけだ。
今までも、そしてこれからも、僕の世界には君だけで、君の世界には僕だけいればそれで十分だ」
昔から寝顔の変わらない少女の額にキスを落とし、耳元に囁く。
「涼ちゃん、好きだよ」
もし、君が何を言っても、拒んでも、
絶対───
「…一生、逃がさない」
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