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02
「はあ……」
久しぶりに定時に帰宅した。時刻は午後6時すぎ。こんなの会長に就任して初めてのことだ。
思わず溜め息をついてしまったのは他のメンバーがどう思っているかで、いくらボイコットしてるからと言ってこのことを知らないとは思いづらい。結局は俺が居ようが居まいが関係ないと言われているようで、分かってはいても心が酷く痛んだ。
「そうだ。何か作ろうかな」
思わずノートパソコンを開いて仕事をしようとしたが、ふと思い立ってキッチンに向かった。久しぶりに愛用のギンガムチェックの青いエプロンをつけてキッチンに立つ。
「あちゃー……」
改めてじっくり冷蔵庫を覗いてみたら、卵を始め、いろんな食材がやられていた。消費期限が切れた生ものを中心に、中身をシンクに流してごみ箱に捨てて行く。
生ものは駄目になってしまったが、乾物やら粉類等、直ぐに使える食材も多い。朝食用に買っていた牛乳と固形チーズ、それに小麦粉を使い、パスタを茹でて卵なしのカルボナーラもどきを作ってみた。
他にも小麦粉を使ったパンケーキやら大丈夫そうな野菜と果物を使ってフレッシュジュースやサラダを作り、食卓に並べる。いかんせんいつものことながら一人ぼっちの食卓は淋しいのだけれど、久しぶりに料理出来たことに満足して食卓につく。
「いただきます」
久しぶりに口にした自分の料理は、泣きたくなるほど美味しかった。心に余裕がない状態での食事は味覚を感じられなかったから、感慨もひとしおだ。
夕食後、後片付けを済ましてずっとやりたかったテディベア作りに熱中した俺は、久しぶりに充実したひと時を過ごしたのだった。
この日、およそ一ヶ月ぶりに、枕元に並べたお気に入りが一体増えた。
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