1218人が本棚に入れています
本棚に追加
09 時雨side (会計)
羽柴から受け取った資料を握りしめて、去って行く羽柴の背中を目で追った。本人はもう大丈夫だって笑ってたけど、俺からしたら全然大丈夫くは見えないんだけど。
なんとなく、前よかは羽柴が飼ってる目の下のクマさんが薄くなったような気もしたけど、完全にいなくなったわけじゃない。顔色だっていつもよりはマシだってだけで、顔色が悪いことに違いはなかった。
「……羽柴、大丈夫かな」
俺はバカだから生徒会の仕事がどんなに大変なのか、よくわかっていない。ただ俺達は全校生徒からの投票で役員に選ばれたのに、投票をすっ飛ばして生徒会長になった羽柴がずるっちくて納得出来ない。
それだけでもむかつくのに、羽柴から会計をやれと言われていきなり仕事を押し付けられた。ただでさえちんぷんかんぷんなのに仕事を教えてくれる言葉遣いも難しくて、何が何やらさっぱりで。
そうこうしてるうちに鷹司が帰ると言い出した。鷹司は中学時代も生徒会長をしていたから、高校も会長をするもんだとばかり思ってた。
投票結果は知らないけど、当然、投票では断トツで一位だったろうから羽柴の存在が許せなかったんだろうね。俺も、今でも会長は羽柴より鷹司がなって当然だって思ってるもん。
羽柴が新歓の構成案だって言っていた資料を見た。つまりは新歓で何をするかの資料ってことか。
毎年、生徒会役員との鬼ごっこだとか、そんな感じの特別なイベントがある。俺ん時(つまりは去年ね)も鬼ごっこで、役員の誰かを捕まえたら、その人に学校を案内して貰えるというものだった。
「あ……」
当然、今年もそれをやるんだとばかり思っていたら、羽柴はいくつかの違ったイベントをあげていた。役員と交流するためのものじゃなく、全校生徒を巻き込むものが多くて少し戸惑った。
「あ、これいいじゃん」
けど、どれも面白そうで。その日の昼休み。
「ねえねえ、これ見てよ」
いつもの屋上で、俺はその資料を皆に見せて回った。
最初のコメントを投稿しよう!