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「ただいま」ガチャッとドアを開けると、それぞれ作業をしていたお母さんとお父さんがぴたっと動きを止めた。一度、僕の方をちらっとみてまた作業を再開し始めた。
「アンベルに光の声の事、話した」そう言うと、お母さんは翼の手入れをやめて、近くの壁を思いっきり叩いた。そして、心配そうな顔をする。
「大丈夫だよ、アンベルは受け入れた」そう言っても、お母さんは心配そうな顔を続ける。お母さんはそばに落ちていた葉っぱともともと握っていた鋭い枝を使って何かを書き始めた。そして、バッと僕の方に葉っぱを差し出した。
『裏切られたらどうするの?死ぬのよ!』
僕は葉っぱを受け取ってくしゃと握った。
「もういいんだ...もう限界なんだよ!!」お母さんはドキッと肩を震わせた。
ごめん、お母さん。僕はもう一人で抱えきれない。聞いてほしい。僕の気持ち。
すると、お父さんが僕をキッと睨んだ。そして、葉っぱと枝でまた何かを書き始めた。お父さんはドンッとテーブルの上に叩きつけ、お母さんと一緒に部屋を出ていった。
『もう、母さんに近づくな。邪魔者は出ていけ。お前は家族じゃない』
あれ?
...そうだった。僕は邪魔者だ。何を考えていたのだろう。なぜ家になんて帰って来た?もう家には戻らないと決意していたのに。きっとアンベルの優しさに油断したんだ。
僕には、家族なんていない。家族を傷つけた僕に幸せなんてない。
僕は棚にかけてあった一冊の本を手に取り、家を出た。そして、秘密の場所に向かった。
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