4月 新学期ですね

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「おーい、カズ聞いてる?」 「……てっちゃんはこーなること、知ってたわけ?」 「知らなかったよー。俺も呼ばれただけだしね」  などと言いながら、てっちゃんはニヤニヤ笑ってる。いや、ヤツは基本的に笑ってるが、この笑い方は確実に俺をバカにしている。 「てっちゃんは元々風紀だったの?」 「どーだろうね」  するとドアが開き、ふたりの男が入ってきた。  面白いほど、身長差がある。  先に入ってきたのは、背が高くてがっしりとした武道をやってそうなタイプだ。彼は資料を手に、後から入ってくる男を待っている。  もうひとりは細身だが、着痩せしそうなタイプだ。その眼光は鋭いが、どこか疲れた雰囲気の男だ。彼が着席すると同時に、デカい男が話し出す。 「ではこれより、今年度第一回目の風紀委員会を始める」  続いて小柄な男――ただし俺よりはデカい――が席を立ち、そのハヤブサのような鋭い目で全体を見回した。 「俺が委員長の小嶋隼人(こじま はやと)だ。一年間よろしく頼む」  ――え。任期って一年なの?  任期が一年だと聞いて、少なからず俺がショックを受けてる間に、自己紹介の時間になっていた。  この場にいるのは一年、二年から三人ずつ。三年は委員長と副委員長を含めた五人で、計十一人だ。どうやら各クラスから一名ずつ選ばれるらしい。  一年生の紹介が終わり、今度はてっちゃんの番だ。 「2Aの奥村哲也です。今年もよろしくお願いしまーす」  ほらみろ、今年「も」って言ったぞこいつ。どーりでこの空気に慣れてるはずだ。普通一回目の会議とかって、みんな緊張するもんだしな。 「次」  委員長サマの鋭い目が俺を射抜く。どうやら俺の番になったらしい。  席を立って周りを見る。全員の視線が集中する。俺、こういうの苦手なんだよな。 「2Bの瀬川和樹です。よろしくです」  当たり障りのない挨拶をして、俺は席についた。  もうひとりの二年は知らないヤツだった。まぁ当たり前だが。  彼はC組の伊丹(いたみ)と名乗った。いかにもスポーツマン然とした、野球部にいそうなタイプだ。次期キャプテンらしい。  三年生が終わり、続いて委員長の横にいる男の番になった。 「3Cの江川辰己(えがわ たつみ)だ。副委員長を務めることになった。一年間、共に頑張ろう」  副委員長さんは――長いな。江川さんは、みんなの目を見て一礼した。何だか礼儀正しい人だ。  最後に委員長の番になる。 「改めて挨拶する。3Cの小嶋だ。この一年、長としてこの風紀を率いる。先に言っておくが、仕事のできない人間は、片っ端から切り捨てるからな。覚悟しておけ。以上だ」  委員長怖ぇ……。  ほらみろ。この場の空気が一気に凍りついたぞ。ただ約一名、隣の王子様はニコニコしてるが。  かくして、平凡を目指してた俺の高校生活は、一抹の不安を胸に宿しスタートした。 【4月 新学期ですね】完
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