第三章

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「……先生…んっ……もっと、抱いて…いて……」 滲み噴き出す汗に、抱き合う身体がしっとりと濡れて(ぬめ)る。 せがまれてキスをすると、吐く息が熱を孕んで、 こんなにも貪欲に女性を求めたこともないと……、 そう思うだけで、達ってしまいそうにも感じた……。 抱き締めた腕の中で、 「……本当は、こんな風にずっと……」 囁きかけると、 「……君を、優しく抱いてあげたかった……」 彼女と過ごした夜のことが頭をよぎった。 「……責め立てて泣かせるつもりまでは、本当には、なかったのです……」 息を整えようとして波打つ胸元に、そっと顔が(うず)められて、 「……君の心を手に入れようとして、あんな形でしか愛せなかった私を、君は……」 そう言いかけたのを、彼女が首を横に振り、 「……もう、いいので……」 口づけて、私のその先の言葉を封じ込めた。 「だから、先生、抱いていて……」 ぎゅっと背中に抱きつかれると、 「抱いて……もう離しませんので……」 その身体を両腕にきつく抱き寄せて、堪らない想いのままに唇を重ね合わせ、深く接吻(くちづけ)た──。
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