第三章

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……葬儀から数日が過ぎて、業務終わりの挨拶をしに来た彼女へ声をかけた。 自分の気持ちにも、いい加減にけりをつけなければならないと感じていた。 ──家へ呼び、こんなことを話すべきなのかとも思いつつ、 「……。……こないだは、あなたに泣きつくような真似をして……」 と、切り出した。 「……泣き顔を誰かに見せるつもりはなかったのに、あなたに見られてしまうなど……」 黙って聞いてくれている彼女に、気持ちとは裏腹に話すのが止められなくなる。 「……あの後、母には咎め立てられました……葬儀の場を離れるなどと……」 こんな風に誰かに本心を話したようなこともなく、心情を吐き出す躊躇(ためら)いから指を何度も組み替えずにはいられなかった。
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