桜の娘

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「千を祓うとお前は我と交した。覚悟せよ」 「それを見届けるとあなたは私と交した。あなたこそ(覚悟が)必要だ」 「口の減らぬ小娘よ」と、口角を上げれば鋭利な牙が覗く。 「我もそろそろこの鬱陶しい空には飽いた。いい加減、美姫(日の姫巫女)を拝みたいものよな」 鬼神、早良親王は己の憤怒を神気に転じて、掌に集める。 そして、その怒りのままに天を打ち破った。  荒れ狂う雷神が暗雲の中に産まれた。  稲妻が駆け巡り、それは龍蛇の如く、穢れを喰らっていく。 そして、仕上げとばかりに稲妻は天より地を射抜いた。 ドォオオン!!! 地割れと共に山肌が崩れ、地だけでなく天も割れた。 「あ……」 青空だ。 嘘のような眩しさに手を掲げて、涼音は目を細めていた。
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