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「ふぅん……。大層な霊力を持つ者を見つけたと思えば、これは驚いた。既に神のお手付きとは」
傀儡子の王旭は、卓に置いた水盆を眺めながら、白濁した鈍色の瞳を細めて独り呟いた。
部屋に入る月明りだけを頼りに水底に映るのは、狩衣装の白い面差し。
「月も魅入る美しい娘よ。お前の顔はよく映る」
王旭は、傀儡とするのに手頃な強い霊力を秘めた者を探して、昼間に産土神社を訪れていた。探し人を占じて、社日に参拝するが吉と出たが故だ。
青丞――青の舞姫は王旭の差し金だった訳ではない。
舞姫にその意図はなく、『糸』が知らずして付けられていたのだ。
舞姫は自身が傀儡だったことさえ知りはしない。
糸は王旭の手元に置いた水盆に繋がっており、水底には涼音の夢が映し出されていた。それを覗き込みながら、王旭はうっそりと舌舐めずりをする。
「舞姫の御霊によって、夢の通い路は整えられた。お前の清らかな身体、夜毎蝕んでやろう」
悪夢でいたぶり、陥れ、救いを求めて涼音が手を伸ばした時、糸を垂らして傀儡とする。
それが王旭のやり方だった。
「実に尊い犠牲とはよく言ったものよな……」
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