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「なぁ、お主。そろそろ戻った方がいいのではないか?」
「はぁあぁ?」
怒気の籠った濁音でクロネコは、酒杯に舌を這わせた。
「これ、黒いのっ!『琵琶弾』をビビらすでない。音が割れるであろうが」
げっそりとした布袋様もどきの『輝』が叱責するも、クロネコに睨み付けられ、隣に座る『暖簾』に思わず抱き付いた。長い前髪に付いた玉をカチカチとかち合わせながら、暖簾もコクコクと頷くが、クロネコの尻尾がバシッと、飛んできてヒュ~ンと弾かれる。
ボスっとそれを受け止めたのは一つ目の毛玉。
『これまでは小天狗の手綱があってこそ何とかなっておったのだ……』
『あれに彷徨われては、世も末というもの』
およそ幽鬼のように、彼らは消えてしまいそうに囁き合う。
『それに、華が無ければ宴会も盛り上がらぬわ……』
『儂ら端から華見たさに追っかけてるんだ。黒いのだけなら儂ら帰るぞ?』
『これは、小天狗に引き取りに来てもらおうぞ』
九十九神らは、総員一致で『んだ、んだ』と、頷き合っているところだった。
『おいっ!大変だ!小天狗の危機だぞ!』と、乗り込んできたのは古い香炉の『花咲爺』だった。
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