barのマスターは今日もツンデレ。ー戦隊ヒーロー編ー

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「えっ、えっ? 何?」  慌てるイノクマさんに、生暖かい眼差しで美青年おるが言った。 「大丈夫。  ♪少~しもこわくないわ~♪」  次の瞬間、眼鏡の美青年おるは、やさしくイノクマさんを抱き締めた。イノクマさんの中の乙女的な何かが甘く弾け、胸のなかにほんわかしたなにかが、広がっていく。 「ほわわ~!」  背景に花を撒き散らしながら抱き合うイノクマさんと美青年おるに、美少年アラタがもじもじしながら近づいた。抱き合っているふたりの耳元で、こそっと声を潜めて言う。 「私もハグ、したい……。  混ざってもいいですか?」  美少年アラタはそれだけいうと、足先でのの字を書きながら、上目使いで二人をみた。ハグする気満々である。おるは慈愛を込めた眼差しで片手を広げ、アラタを誘う。それをみたアラタは、満面の笑みでイノクマさんの背中に飛びついた。ふわふわの毛並みに顔を埋めると、無邪気に言う。 「うわぁ、もふもふだ~!」  その瞬間、ふわふわほわわんとした幸せな空間が広がった。カウンターからそれを見ていた一輪の可憐な花が、羨ましそうに声をあげる。 「私もハグ、するー!」  その要望を聞き、鼻眼鏡をかけた奇異な姿の黒猫が、可憐な花をそっとイノクマさんの頭の上へ移動させた。  幸せな空間がさらに大きく膨らみ、ピンク色のほわほわした空気が周囲を漂った。その空気に当てられ、鼻眼鏡をかけた奇異な黒猫もまた、真綿を抱くようにしてイノクマさんに抱きつく。そして、カウンターの中で羨ましそうにその様子を見つめているマスターに一声かけた。 「さあ、レッドも一緒に……!」  引き寄せられるようにカウンターの外へ出たマスターは、イノクマさんの背中にくっついている美少年のアラタもろとも、やさしく抱き締めた。こうして幸せな空間がさらに大きく膨らみ、周囲に弾けた。その瞬間、ハグの中心にいたイノクマさんが叫んだ。 「ハグ・リフレーッシュ!」  イノクマさんの声と共に、周囲に花びらが舞い、ふわふわしたあたたかい空間がbar全体を包み込む。幸せなハグの輪が周囲に広がっていった。 「どうやら私……、疲れていたみたい。  みんなにハグされて、気づいたの。生活にハグが足りなかったって」  イノクマさんはキラリと光る涙を浮かべながら、ハグに救われた、と言って微笑んだ。 それを聞いたごれんじゃい!の面々は満足げに微笑むと、イノクマさんのもふもふの毛並みに再び顔をうずめるのだった。
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