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「それでね、あたしも一緒によっちゃんの家に行くから」
「どういうこと? 都会に観光にでも行くの?」
紗弥加は少し首を傾げ、上を向いた。
「ずっと、一緒かな?」
「どういうこと?」
「あたし、よっちゃんの家にお世話になることになったの」
「「「ええええーっ!」」」
三人の驚愕の声に構わず、紗弥加は淡々と自分のこれからの生活を説明を行う。
「ほら、あたし来年から高校生じゃない? この村から高校に通うとなると、何時間もバス乗ったりして大変なのよね。だから、よっちゃんの町の高校を受験することにしたんだ」
「つまり、うちの近くに住むってこと? 東京は下宿とか高いよ?」
「違うわよ。よっちゃんの家に住むことになったのよ、いきなりの都会暮らしに放り込まれるのもアレだからって、よっちゃんの家の近くの中学校に転校しちゃった」
「ほんと急な話だね。友達とかと別れて寂しくないの?」
「この村、複式学級だからね…… あたし、同級生いないし。世話してるガキンチョと別れる気分かな?」
ちなみに、兼一と桜貝と紗弥加は同じ教室で勉強するクラスメイトである。
学年の違い故に教師も同時に授業を行うことが困難であるために、ほぼ全員が教科書、参考書を使った自習状態となっている。
「そっか、紗弥加お姉ちゃん村から出てくのか……」
桜貝は心から寂しく思いつつも、都会っ子になれる紗弥加のことを羨望の眼差しで見つめていた。
「べ、別に俺は寂しくなんかねぇぞ! 低学年と中学年の奴らは紗弥姉のことが大好きだったからな! そいつらのことの方が心配だよ」
兼一はそう言うが奥歯を噛み締めた顔をしていた。その顔には僅かに憂いを浮かべていることから寂しく思っているのは明白であった。
「そんな訳で、よっちゃん連れて買い出しに行こうと思って呼びに来たわけよ」
四人は秘密基地を後にし、村の雑貨屋への道を歩いていた。
義圭は紗弥加に手を握られていた。その温かく優しい手に繋がれた義圭の心臓の鼓動が激しく叩く。
「幼稚園児の引率みたいに手繋ぐなよな」
兼一が半笑いで二人を冷やかした。義圭は顔を真っ赤にして手を振りほどいた。
「別にいいじゃない。年に一回しか会えなかった可愛い弟みたいなもんだから、ベタベタの一つぐらい」と、紗弥加が優しく微笑む。
「いくら従姉弟同士でも中学生と小学生で手を繋ぐのってキモい」と、桜貝が嫌悪感たっぷりに素直な感情を述べてしまった。
「あら、さくらちゃんだって最近まであたしにべったりだったじゃない? 最近まであたしと手繋いで学校行ってたの誰かなー?」
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