三章 天狗攫い

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カラン…… 蝶番の裏を激しく叩きつけたことで、蝶番の螺子が外れて落ちた。この時点で四ケ所で固定されている扉の一角が崩れたのである。銀男はその一角のネットフェンスを掴み押し込んだ。すると、再び蝶番の螺子が落ちる音が聞こえる。 「後は……」 今度は下の蝶番の裏を思い切り蹴り飛ばした。激しい蹴りがネットフェンスの扉の下部に炸裂する。 何回も続けているうちに下の蝶番の螺子も外れて地面に転がる。その瞬間、扉の蝶番が外れ、支えるのは南京錠に繋がり巻かれた鎖と、ラッチロックの鉄棒のみとなった。ここまでくれば扉はもう半分以上開いたようなもの。 更に止めとして扉を上に軽く持ち上げ、扉全体を押し込んだ。 すると、扉は(ひしゃ)げて変な形状に曲がり始めた。それに巻き込まれて鎖とラッチロックで繋がっていたフェンスも変な形に曲がり始める。 銀男はその扉をダメ押しと言わんばかりに激しく蹴り飛ばすと、人一人分が通れるぐらいの隙間が生まれた。 「さて、行こうか」 「やるぅ」 かなり乱暴な手段だったが、こうしてネットフェンスはこじ開けられた。 二人はそのままフェンスを通り抜け、雨翔村に戻ることに成功したのである。
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