三章 天狗攫い

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 三人は人目を忍び、橋の下で休憩を取っていた。義圭、兼一、桜貝がよく丸裸で遊んでいた川の近くにある橋の下である。 「さて、村に戻ったはいいけど…… 彼女を暫く安全な場所に置いておきたいね」 「捜索隊に渡したいところですけど……」 「駄目だよ? 捜索隊…… いや、今は村の誰が敵か味方かが分からない。この儀式が遂行されないと困る勢力に渡したらこれまでの苦労が全部パーだ。あの時、電気つけた奴がいる以上はこっちの動きがバレてるかも知れない」 「あの時って……」 「あの迷路から出る時に最後に電気点けたやつだよ。電気が点いたってことは電気点けた奴がいるってことだろ? うちらだって見られてる確率が高い」 「僕の家なんかは」 「こんな死装束姿の女の子抱えてかい? 君の家に行くまでの道中で発見(みつ)かっても厄介だ。どこか村人の目につかない場所とかあるかね? せめて毛布でも被せて寝かせてやりたい」 義圭は考えた。人目のつかないところと言われてもな…… そう考えている間に橋の上を捜索隊が何度も通りかかる。このまま、橋の下まで見に来る奴が来たら終わりだ。義圭は行くべき場所を考える、一つだけ…… 思いついた。 「秘密基地!」 「君たちのような子供が作る秘密基地(セイフハウス)かね。大人の目は?」 「多分…… 大丈夫だと思います。僕たち三人だけの秘密の場所なので」 「ここから近いかね?」 「歩いて…… 五分ぐらいの森の中です」 「オーケイ」 その時、橋の上から銃持ちの捜索隊が一人降りてきた。散弾銃の先端で草をかき分けながら、茫々の草が生えた坂道を降りてくる。三人はそれと入れ替わりに橋の上に行き、秘密基地に向かって歩き始めた。
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