四章 天狗の抜け穴

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 銀男は床に置かれた秦仁志の右腕に手を合わせた。それから義圭から拳銃を受け取り、手慣れた手付きでシリンダーをを軽く押すと、五つの穴が空いたシリンダーが左に振り出された。そして、これまた慣れた手付きでエジェクターロッドを押して38スペシャル弾を排莢した。 リボルバー銃は弾丸を撃っても、シリンダー内に薬莢が残る。 使用済みの弾丸は四発、残り一発は未使用の弾丸であった。 「四発までは天狗に撃って戦ったようですね。最後(ラスト)一発(シューティング)で天狗を仕留めることが出来れば、こんなことには……」 たらればを言っても仕方ない。銀男は38スペシャル弾をシリンダーの中に入れ直し、右手を軽く振ってシリンダーを元の位置に戻した。 義圭はそれを呆然とした表情で眺めていた。銀男がそれに気付いた。 「どうしたね? アホ面などして?」 「い、いや…… 随分と銃の扱いに慣れてるなって」 「韓国やハワイの射撃場で銃をよく撃ってるものでね。それよりも、今回の話はあまりにもオカルトが過ぎた与太話だ。警察に悪戯だと思われかねない。だが、10年以上前に失踪した巡査の銃が手に入ったことで、ここに警察を突入させる大義名分が出来たよ。実にお手柄だ」と、言いながら銀男は拳銃をジャケットのポケットに入れた。そして、礼拝堂の出口に向かって歩き始めた。 「長居は無用。今度の出口は少しばかり濡れるけど我慢してくれよ」 義圭は銀男の足元を見た。高級(たか)そうな革靴と、ズボンの裾がびしょびしょに濡れていることに気がついた。 「もしかして、川経由ですか?」 「地下の川と地上を繋ぐ、とある場所だよ。私も地下を流れる川と上の地図を照らし合わせたら、一致してびっくりしたよ。正に天狗の抜け穴だ。ああ、時間がかかったのはルートの構築と、村人達に見つからないような道を慎重に考えていたんだ」 「いえ、来てくれただけで嬉しいです」
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