終章 緑成す秋

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その鑑定結果を簡単にではあるが、紹介しよう。 天狗攫いで行方不明とされた人骨のDNAは全てある一人の人物を共通とする遺伝子が発見された。父型のDNAが全て共通しているのである。 つまり、礼拝堂にあった人骨で天狗攫いに遭ったとされる者は腹違いの兄弟姉妹と言うことになる。 そして、父型のDNAは礼拝堂に落ちていた白鬚、地下の川沿いに残っていた血痕と共通する。 天狗攫いの遺族の母に遺骨を渡す際に担当刑事は聞いた 「あなた、昔天狗攫いに遭いませんでしたか」と。 すると、遺族の母は一斉に口を噤んだ。そして、しばらくした後に肯定の意を示すように深く頷いたとのことだった。夫にも聞いてみたところ、天狗攫いに遭った後に子を産んだと言う…… 最後に、この村に昔から暮らす者のDNAは…… 天狗神社に残っていた土生一族、つまり宮司一族のDNAとの共通点が多く見られた。 この村に昔から暮らす者は皆、血の繋がった親戚関係であると言える。と、結論がなされた。隔絶された田舎なら祖父や曽祖父の代まで遡ればあるかもしれないが…… この村の場合は皆、腹違いの兄弟姉妹、種違いの兄弟姉妹、いとこ婚、などと言った同じ一族同士の極めて近い血縁関係で形成されているのである。中には倫理的に反するような「近すぎる血縁」もあったと言う……  腹違いの兄妹同士から生まれた子供などがそれにあたる。
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