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葬儀場は村外れにポツンと建てられていた。玄関前には男が一人、その男はタクシーから降りた義圭に気づき、走りながら駆け寄ってきた。
「よっちゃん! 久しぶりぃ!」
義圭はその男の姿を見ても、誰かが分からなかった。
褐色の肌に髪は短く切り込んだスポーツ刈り、背も170センチを超えるぐらいでガッチリとした体格。そんな男は義圭の知り合いにはいない。
「あれ? 誰だっけ?」
その男はくっくっくと笑った。
「そっかあ! 俺、野球始めて大分見た目変わっちまったからなぁ。よっちゃんは背が伸びただけで、あんまり変わってないなぁ? ん?」
義圭はその男の顔をじっと見た。顔と体格こそ変わっているが、僅かに残る懐かしい面影のある男、いや、親友の名前を導き出した。
「ケンちゃん?」
「そうだよ、3年で身長ニョキニョキ伸びるし、野球部の練習で筋肉もかなりついたからなぁ! 数年前の写真見る度に『誰?』って自分でも思うよ」
その男は兼一だった。麦わら帽子にランニングシャツにハーフパンツのステレオタイプままの田舎少年はもうここにはいなかった。ここにいるのは熱血野球少年である。
兼一は学生服の夏服を纏っていた。半袖の制服から出る両腕は褐色に日焼けしていることと、筋肉質であったことからロダン作の彫刻のような輝きを持っていた。上半身は薄手のTシャツに夏服の学生服を纏っていることで筋肉の隆起がハッキリとしていた。顔も三年前の面影こそあるものの引き締まった面持ちであった。
三年前と違って「男の子」から「男」に成長を遂げたのであった。
「身長いくつ?」
「今年の四月の身体測定で173だったからなぁ。まだ伸びるぜ?」
小学校6年生の夏の時には義圭の方が身長は高かった。この三年で兼一に身長を抜かれたことに激しい悔しさを覚えるのであった。
ちなみに義圭の身長は、中学校3年生の平均身長である167センチである。
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