ニ章 天狗様

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 三人は天狗神社を後にし、秘密基地への道中を進み行く。 その途中、川に掛けられた小さな橋を渡っている途中、三人は足を止めた。 橋の下を流れる川は、泳いでいる魚も見えるぐらいに澄み渡っている。 「懐かしいね。この川」 「昔、良く飛び降りたね」 「そうそう、ここがあたしらのプールなのよね」 「学校にプール無いから、スク水なんてねぇから裸でさぁ……」 桜貝がそれを言った瞬間に三人は思わず笑いを堪えた。 「あたしら三人、小学校の結構いい年齢(トシ)になるまで川でスッポンポンの丸裸で川入ってたよね……」 「今にしてみたらとんでもねぇな」 「橋の上を村の人が通っても別に気にすることなく、あそこの岩の上で裸で川の字になって寝てたよね……」 「今じゃあ到底出来ない…… 猥褻物陳列罪だわな……」 義圭は川の中央にある岩を指差した。川遊びの際、三人はあの岩の上で丸裸のまま寝転がっていた。岩の上から三人で小便をしたり、ふざけて岩の上からの落とし合いなどもしていたことを思い出し、笑い合った。 「そうそう、東京帰ってプールの授業の着替えの時にさぁ、あそこまで日に焼けてたからツレに誂われたよ。他の奴ら、日に焼けてても水着のところだけは白くなってんのに、なんでお前はあそこまで黒く焼けてるんだって」 「水着着れば良かったのに」 「お前らが俺を羽交い締めにして水着ポイ捨てしたせいだろ!」 実際のところ、川遊びの際に義圭は裸になることを躊躇っていた。 裸で遊ぶ二人を見ても「あいつら、よく裸で恥ずかしくねぇな」と訝しげな目で眺めていた。三人で水をかけあっていたところ、兼一が前触れもなくに義圭を羽交い締めにした。眼前に桜貝が立ち、義圭が履いていたスクール水着を引きずり下ろし、そのままポイと川に投げ捨ててしまった。 義圭は股間を隠しながら激昂したが、二人とも裸だしまぁいいやと諦観し、裸で川遊びにするに至ったのだ。三人が裸で水遊びをしているところに、橋の上を自転車に乗った紗弥加が通り過ぎ、義圭は慌てて川にしゃがみ込み股間を隠したことを思い出し、恥ずかしさと懐かしさと悲しさで思わず俯いてしまった。 「俺ら二人はともかく、さくらは良く恥ずかしくなかったな」 「アンタ達みたいな男と一緒にしないでよ。兼一とだったら、昔は一緒にお風呂入ってたし、あの当時は裸見られたところで気にすることでもないわよ」 「俺、今でも恥ずかしくねえぜ」 「アンタ、最近は野球のアンダーウェアのとこだけ日焼けになってないじゃない。あんなパンダみたいな中途半端な日焼けで恥ずかしくないなんてよく言えるわね?」 「お前だって、ステラ婆ちゃんに注文してもらったビキニの日焼け凄いじゃないか」 すると、昔の自分たちと同じような子供三人組がドタドタと走りながら橋の上にやってきた。そして、服のまま川に連続で飛び込む。 「あれ、昔俺たちが裸でここで遊んでいた時と似たような歳だよな……」 「そうね、普通あれぐらいの年齢(トシ)になれば羞恥心の一つもあるよね」 いい年齢(トシ)して丸裸で駆け回り泳ぎ回っていた自分たちとは何なのだろうか…… そんなことを思いながら三人は橋を後にした。
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