ニ章 天狗様

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 鬱蒼とした林道を歩き続けた三人は秘密基地に辿り着いた。 ドアを開けると、むわぁとした熱気がバックドラフトのように流れ出てくる。これはいけない。桜貝がドア脇のサイドボードの上に置かれたエアコンのリモコンの電源を入れた。35℃とリモコンの液晶ディスプレイに表示されていた気温がみるみるうちに下がっていく。26℃の冷房の快適温度まで下がったところで、三人はやっとのことでバンガロー中央のテーブルの椅子に腰を下ろした。 義圭は前に来た時と違い散らかった形跡なく、物こそ置かれているもののキチンと整理整頓がなされていることに驚いてしまう。 義圭は買ってきたばかりのお菓子をテーブルの上に広げた。飲み物はこれまでの道中で少し温くなっていたため、冷蔵庫に入れて僅かでも冷やすことにした。 「ここ、掃除してるんだね?」 「そうだよ。よっちゃん来ない間も掃除してたんだよ?」 「そうそう、くどいようだけど。誰にもここのことは」 「言わないよ。ここはあたし達だけの秘密の場所」 「俺が来なくなってから、ここで何してたの?」と、義圭が二人に尋ねると、二人は目配せをした。 「夏休みの宿題…… とか?」 「真面目だねぇ」 「雨翔村(ここ)にも来ず、予備校で勉強してるよっちゃんには言われたくないよ」 義圭は頬杖でお菓子を摘んでいた。何の気も無しに窓際を見ると、三年前には無かったマットレスが置かれていることに気がついた。 その上にはタオルケットと枕代わりと思われるクッションが置かれていた。 「何? マットレスなんて置いたの?」 義圭はスッと立ち上がり、マットレスの上に身を委ねてぽよんぽよんと軽く自分の身を跳ねさせた。 「村に来た余所者(ヨソモン)が粗大ごみの日に捨ててったんだ。でもこの村、粗大ごみの収集なんて業者に連絡しないと来ないだろ? ゴミ捨て場にずーっと残ってたのをここに持ってきたってわけだ」 「そうそう、大変だったよね。人目につかないようにここに持ってくの」 「使えるように掃除機かけたり、日干しとかしてもダニがなかなか死ななくて大変だったよね」 「埃でクシャンクシャンとクシャミしたりねぇ……」
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