ニ章 天狗様

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 これ一つ使えるようにするのに苦労したんだな、お前ら。義圭はその苦労に甘えるようにゴロリと横になった。タオルケットの上に手を乗せると、その下に何かがあるような異物感を覚えた、その異物感の正体を確かめるためにタオルケットの中に手を伸ばすと、正方形のビニールの容器が封を切られたものがあることに気がつく。 まったく…… 飴玉の包みのビニールぐらい捨てておけよな? 義圭はその包みを手に取った。直接、手で触れてみて、飴玉の包みのビニールにしては大きすぎることに気がついた。  義圭はこの瞬間、三人組は「ふたり」になってしまったことに気がついてしまった。田舎で娯楽も少なければこんな関係にもなるか…… 義圭はかつて二人と「都会はススんでるんだろ? 怖いなぁ」と、言った話をしたことがあるのだが、今、その場で「お前らの方が余程ススんでいるじゃないか!」と叫びたい気分になっていた。マットレスに寝転ぶ義圭、そこから少し離れたテーブルにて笑顔で何やら話しながらお菓子を摘む兼一と桜貝。 マットレスとテーブルの間には決して破れない壁が出来てしまったことを義圭は知ってしまった。  昔は三人裸で川で遊んでいたのに、今は二人でマットレスの上で裸ですか…… 二人の中では義圭の裸は12歳の時のちんちくりんな裸しか知らないだろう。しかし、二人は裸で体を重ね合う関係で、お互いの裸はどんなものかよく知っているに違いない。 義圭は悔しさを押し隠しながらビニールの包み、コンドームの包装をぐしゃりと握りしめた。手のひらにゴムの薫りがふわりと広がる。そして、マットレスの脇に置かれたゴミ箱にそっと捨てた。  義圭の財布の中にもコンドームは入っているのだが、使う機会には恵まれていない…… ちなみに、クラスの友人から「おふざけ」で貰ったものである。 義圭の友人たちは、この手の話は知識こそあるが実践に至った者がいなかった。むしろ、ガキっぽいと言っても良い。箸が転んでもおかしいそのままに子供のように輪ゴムを飛ばしてぶつけて遊び合って笑い合うぐらいである。 都会の子供がゴムを飛ばして遊ぶのに、田舎の子供はゴムで飛ぶのを防いでいると言う事実に義圭は何とも言えない敗北感を覚えるのであった。
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