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それから三人は思い出話に花を咲かせるも、義圭だけは笑顔のままで何とも複雑な気持ちを隠せずにいた。どんな話をしても、右から左に抜けていく…… 上の空の状態になった義圭の様子に兼一が気がついた。
「どうした? さっきからぼーっとして」
「いや、何でもない」
一体俺は何を彼氏彼女の間に入っているのだろうか。俺はお邪魔虫ではないのだろうか? 義圭はそんなことを考えているうちに再び上の空の状態となってしまう。
「少しは元気出たと思ったけど、また元気なくしちゃったね」
桜貝が心配そうに述べた。義圭の内心は複雑で「誰のせいだと思ってるんだ! 誰のせいだと!」呪詛の言葉を何度も脳内で延々と呟くのみ。
桜貝は何かを思い出したように手をぽんと叩いた。
「みんなで写真撮ろうよ? よっちゃん、スマホ持ってるでしょ?」
義圭はポケットからスマートフォンを出した。二人は三年前とは違う機種を見て、新しい玩具を見る子供のように目をキラキラと輝かせていた。
「これ防水のやつだろ? CMでみたぜ」
「何だよ、村から町になるのにまだ電波局出来てないのか?」
その通り、義圭のスマートフォンの電波状態は「圏外」であった。
「来年やっと出来るみたい。後で番号教えてね」
「ははは」
義圭は苦笑いをしながらカメラを起動した。三人が同じフレームに入るように手を動かし、細かく位置を調整しているように見せかけた。
「二人はくっついてくっついて」
前方で二人並んでしゃがんで並ぶ兼一と桜貝。義圭はその中央に顔を乗せたところでシャッターを切った。
カシャ
「二人共、ケータイ買ったら連絡してよ。今撮った写真送ってあげるから」
義圭は内心では連絡はこないと思っていた。自分でも何を心にもないことを言っているんだバカバカと頭をぽかぽかと殴りたい気分になっていた。
「いや、村のコンビニのコピー機でプリント出来るはずだよ? 後でプリントアウトしてくれよ?」
便利な世の中になったもんだな…… 義圭は「くくく」と苦笑いを浮かべてしまう。
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