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「話し込んでしまったようだ。申し訳なかったね、勉強の邪魔をしてしまった」
「い、いえ! とんでもないです! 面白くて興味深い話でした!」
二人は荷物を纏めて図書館を後にした。図書館の駐車場に入った瞬間、銀男は義圭に尋ねた。
「この村にどこか泊まれる場所はないかね? ホテルとか民宿とか」
義圭は満天の星空を見ながら考えた。ホテルなんて洒落たものが出来たと言う話は聞かないし、民宿を経営している人がいると言った話も聞いたことがない。
「無いですねぇ」
「ははは、さすが田舎だ。ラブホテルなんてものも……」
「無いです」
「成程、ゴザでも新聞でも地面に敷けば即ホテルと言うわけか」
義圭は昼のことを思い出し、顔を歪めてしまった。嫌なことを思い出したものだと、心の中で舌打ちを放つ。
「コンビニのフードコートのテーブルを枕にして寝るかな」
銀男は首をくいと上げ、遥か遠くに輝いて見えるはずの村唯一のコンビニエンスストアを見た。だが、ルクスが高い故に暗黒の中でも過剰なまでに光り輝くそれの姿は見えなかった。
「NO WAY! ありえない! 田舎のコンビニは八時閉店なのか!」
銀男は悔しそうな顔をしながら指をパチンと鳴らした。義圭はそれを苦笑いを浮かべながら見てしまった。
「仕方ない、車中泊か」
銀男はやれやれと言った感じに溜息を吐いた。塒が無くて気の毒に思った義圭は助け舟を出すことにした。
「あの? 僕、明日の朝にはこの村発つんですけど…… 一晩くらいなら」
「有り難い話だけど、君は良いのかね?」
「先程も言った通りに、伯母の葬儀が終わってから惰性でダラダラと家に一人だったんで、構わないですよ。人が亡くなったばかりの家なんで、それが嫌じゃなければ」
「私は気にしないよ。じゃ、一緒に車に乗ってくれ。君の家まで案内して欲しい」
銀男は義圭に握手を求めた。義圭はその手をガッチリと強く握り返した。
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