三章 天狗攫い

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安里はポリバケツを買うと言っていた、そして、車のスペースにはポリバケツが置いてあった跡がついている。安里はポリバケツを持って注連縄(しめなわ)の向こうに行ったことは間違いない。義圭は確信を得るのだった。 義圭は車のライトを切り、ドアを閉めた。そして、注連縄(しめなわ)に向かってツカツカと歩き、注連縄(しめなわ)をぐいと持ち上げて下を潜った。 「おい! 今はわけわからん女のことなんてどうでもいいじゃねぇか」 「考えてみてよ。捜索本部のすぐ近くだぜ? 宮司さん真っ先にこれに気がつくと思うんだ」 「あ……」 「こんな明らかにおかしいもん放置してるってだけで不自然じゃないか。大人たちがここを探さない節穴揃いか…… もしくは」 「あえて放置してる?」 「そう、これが天狗攫いって言うなら…… 恐らくだけど犯人は」 「そんな…… 嫌だよ…… 信じたくねぇよ」 「それを今から確かめるんだよ」 義圭は注連縄(しめなわ)の向こう側に歩を進めた。 「おい! 後からバレると厄介だぞ」 「バレないよ! 今のうちなら!」と、言いながら防犯カメラを指差した。 現状、ラッカースプレーでレンズを塞がれた防犯カメラは張子の虎状態である。 こうなったら、この先に何があるのか確かめてやろう。 兼一も天狗様に逆らう覚悟を決め、注連縄(しめなわ)を潜り抜けた。
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