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カツーン カツーン カツーン……
連続した足音が響いて聞こえる…… もしかしてあの時の天狗か? 本物の天狗だとしても、天狗の姿をした連続殺人犯だとしても、倒して突破する覚悟を義圭は持っていた。シャベルを握る手にも力が入る。
足音の主が部屋に入ってきた。足音の主はシャベルを構える義圭の姿を見て心から驚く。
「藤衛くん…… どうしてここに」
足音の主は銀男だった。義圭は安堵してシャベルを床に落とした。
そして、心の底から安堵しながら銀男の元に駆け寄った。
「銀男さん! どうしてここに!」
「いや、これを聞きたいのはこっちなんだけどね」
銀男は義圭の後ろで眠っている桜貝の姿を見て、うんうんと頷いた。
「この娘が今回の……」
「今回? 今回ってどういうことですか?」
「私の質問に答える前に、一つだけ質問に答えてくれ。この娘、どうするつもりだい?」
「決まってるじゃないですか。村長さんの元に返します」
「と、なると、誰にも見られずこのまま村から脱出するしかないね」
銀男は祭壇の前に立ち、首を上に向けた。その目線の先には採掘場内を照らす照明とは別の光が差していた。その光は誰もが見知った光、太陽の光である。
「成程、あそこからロープで下ろしたってところか。登るのは無理…… 登ったところで袋のネズミでしょうね」
「何一人で納得してるんですか!」
「ごめんごめん、私の信じたくない最悪の事態に近づいてるからね。作戦は立てないと」
銀男は部屋内を歩き回り、散乱した骨を手に取り見回した。その骨は大腿骨の中央がスッパリと切られたものであった。
義圭は険しい顔をしながら毒づいた。
「骨とかよく触れますね? 平気なんですか?」
「私は心療内科とは言え医者だよ? 学生時代に検体の解剖を経験しているから、この手のことは慣れているよ。それより、穏やかじゃない相手が来そうだよ」
「え?」
「骨が切られているんだよ」
「骨が経年劣化で腐り落ちただけじゃ」
「いや、大腿骨や上腕骨がザックリと切られているんだよ。自然風化でこんな切れ方はしない。しかも……」
銀男は骨の切断面をじっと眺める。刃物で切られたことは間違いないのだが、その切断面は連続する刃で削り砕き切られたように見えた。
「そもそもこの骨の山は何なんですか? 怖くてたまんないですよ」
「昨日の話、覚えているかね?」
「天狗攫いですか? 確か悪徳修験者の誘拐が原因だって」
「一般的にはね。この村においては別の意味があるんだ」
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