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6年2組、川口組
6年2組、通称「川口組」と呼ばれるこのクラスは担任の川口先生のカリスマ的な指導で圧倒的な団結力を誇り、個性豊かなクラスメイトがお互いを尊重し合い、切磋琢磨している。
教室の天井には読書の感想を星形に切り抜いた模造紙に一言書いて貼る、その名も「読書の星」が所狭しと光り輝いている。
川口先生は40代前半で独身、美人なのになぜ独身なのかと女子達は川口先生のミステリアスな私生活をあれこれ憶測してはお喋りのネタにしている。
川口先生は美人なのに気どった所がなくて、むしろガキ大将のような茶目っ気があった。春の修学旅行では消灯時間後にクラス全員を一部屋に集めて宴会という名の、お菓子とジュースを開いて大騒ぎする遊びの首謀者。
既婚子持ち女性で学校の先生の見本のような、真面目な松本先生が騒がしい部屋の引き戸を開けて唖然とする。
「何をやってるんですか!川口先生まで、反省会に姿を見せないと思ったら、こんなことしてる場合ですか?子ども達を諫める立場の教師が全く…」
松本先生は、私たちを旅館の廊下の赤絨毯に並べて、
「全員正座一時間!川口先生もです!」
こめかみに青筋を立てて叱り飛ばすと、廊下をドスドスと歩いて去っていく。川口先生は松本先生が去ると、
「あー面白かった。悪戯って楽しいよね」
ウィンクしながら子ども達に話しかける。子ども達も殊勝な顔を崩して笑い出す。
「先生まで正座してるって旅館の人が見に来てるし」
「マジウケるね、全員正座とか」
「足痺れるー。辛いわー」
みんな見つかった悪戯を楽しんでいる。
6年3組の学年唯一の男の先生、金森先生が、
「お前ら馬鹿じゃねえの?」
正座の行列の一番端を見て馬鹿にしたように笑ったのに、川口先生も一緒に正座してるのがわかると態度は一変、
「川口先生、大丈夫ですか?足は痛くありませんか」
赤絨毯に膝をついて川口先生と同じ目線で話しかける。川口先生はクスクスと笑って、
「悪戯の先導は私なんで」
テヘっと舌を出して笑っている。
修学旅行で全員正座させられるという「川口組」に取っての屈辱を晴らす絶好の機会が秋にやって来た。
学芸会の学年の劇は、キャストオーディションをするという。川口先生はこういうイベントが大好き。子ども達を上手く乗せて授業時間を勝手に劇の練習に変えてしまう。
それでも「川口組」の子ども達の成績はそれほど落ちない。授業を早く終わらせて劇の練習がしたくてウズウズしている。だから、授業の時間は国語も算数も、ものすごく集中していて誰一人として私語や内職をしない。
勉強も全力投球、行事も真剣勝負。
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