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なんだか僕の問題、どんどん増えてないか……?
宇白先輩の親衛隊に王道転校生の最上くん、そして今度はストーカー……。
久々に1人になった寮の部屋で、ソファにぐったりと寝転がりながら考える。
宇白先輩の親衛隊の件は、僕に親衛隊ができたこともあり、いくらか制裁の抑制にはなっている。
そして最上くん。
いつの間にか変装を解除して美しいお顔を晒したらしい。出来ることなら不良とそのまま宜しくやっててくれることを願う。
次すれ違っても変装してないから知らない人って事にしよう。
そして最後、これが一番厄介だ。
今のところ正体のわからない、思想が少しヤバめなストーカー。
多分この間鍵が空いていた日、この手紙の差出人で間違いないのだろうと思い色々ひっくり返して家探ししたものの、盗聴器らしい物は見つからなかった。
という事はあの日、覗かれていた……?
そう思うと途端に寒気がして、開けていたカーテンをいそいそと閉めてる。
でも実際、まだ何かされた訳じゃない……。
僕以外のみんなになにかされる前に何とか接触を測ってこういう事するのを止めてみようか。
『ピーンポーン』
声にならない悲鳴を上げてしまった。
不意に鳴るインターフォン、時刻は20時30分。
消灯は22時だからこの時間から出歩く生徒は中々少ない。
そっと、音を立てないようにドアへ近付く。
覗き穴にゆっくり顔を近付けようとすると、した方からカチャリと音がする。
「えっ」
逃げなきゃ。
そう思うのに足は動かず、ドアはゆっくり開いていき、そこに居たのは―
「もー!来るなら先に電話してよ!」
「LINEした」
「気付かなかったら意味ないし」
「飯持ってきてんだから良いだろ」
ドアの前に立っていたのは、お鍋を抱えた犀だった。
今その犯人はキッチンでカレーを温め直している。
ちょっととろみが強くて、隠し味が入ってる犀の特製カレー、僕の大好物である。
「犀のチキチキ3分クッキングー」
「いえーい」
何か始まった。取り敢えず乗っておく。
「まずはこの出来上がった特製カレーを温めます」
「ふむふむ」
「次にこの事前に炊きあげたターメリックライス2人前をチンします」
「おー!」
「お湯を沸かして半熟玉子を作ります」
「おやおや、間に合いますかね先生」
「この助手チェンジでー」
「そういうシステム無いんで、早く進めてください」
犀は勝手知ったる家の様に棚から平皿を2枚取り出して、レンジから取り出したターメリックライスを盛り付ける。
「温め終わったターメリックライスを皿に盛り付けます」
「綺麗な黄色ですね!」
「温め終わったカレーを掛けます」
「わくわく」
「最後に半熟玉子を割り、粉チーズを掛けたら完成でーす」
「……ずっと言いたかったけどクッキングしろよ!」
「半熟玉子作ったろ」
1つスプーンを咥え、もうひとつはお皿に乗せてテーブルへ運んでくる犀。
バブみが凄い。
ママになって欲しい。
「いただきます」
「いただきまーす」
犀のカレーは美味しい。
水分は少なめで、トロトロになった玉ねぎで作られてて、ピーマン、人参、ナス、じゃがいも、ひき肉がみじん切りになってゴロゴロ入ってて、食べ応えはあるけどとても食べやすい。
「犀、ありがと」
「何が?いつも作ってんだろこんなもん」
違うんだよ、さっきまで悩んでた事一瞬忘れて楽しくなっちゃった。
凄いなぁ、犀は。
「じゃ、明日の分もあるから明日は晴がご飯炊けよ」
「はぁい。おやすみ、犀」
「……なんかあったなら言えよ、おやすみ」
犀は僕の頭を一撫でして、部屋を出て行く。
しっかりと鍵を掛けて、ベットへ移動する。
やっぱり犀には分かっちゃうんだなぁ、僕になんかあったこと。
出ていく間際のセリフ、心配そうな顔。
やっぱりみんなに心配は掛けられない。
ストーカーに対して何か手を打とう、でも何をすればいい?
「この人は僕に何を求めてるんだろう」
付き合いたい?
それとも、その……そういう行為をするが目的か。
そもそも実は僕はそういった経験が全くない。
行為だけでなく、恋愛も。
だからこの人が何を目的として僕の事を監視しているのか分からない。
「もっと知りたいな...」
情報がいる。
この人のことを知らなきゃ対処が出来ない。
どうしたものか……。
そんな事を考えながら、ゆっくりと眠り落ちていく。
「ふふ、はは...俺の事知りたいって……ふふふ、嬉しい、御坂くん……」
「さっきまで時雨犀にキレてた癖に、切り替えが早いですね」
「うるさいな…まともに部屋散策する事も出来なかったくせに」
「わざとです、僕らのことを認知してもらう為に」
「手紙で知らせられただろ」
写真にまみれた部屋で二人の男が言い争う。
それは共犯か、同盟か。
目的はまだ、分からない。
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