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新歓編
いよいよ新歓の始まりだ!
と高々に宣言したいところだけどそうは行かない。
なんたって僕は生徒会で、準備、設営、他委員会教師陣との連携その他諸々……。
当日まで鬼のようなスケジュールが組まれている。
「ぁー...授業に出たい…」
なんと特待生のこの僕が、生徒会の特権の授業免除を使い生徒会の仕事に興じているのだ。
これでテストの点が落ちて退学とかになったらどーしよ。洒落にならないな。
現在の時刻はPM13:45
皆はお昼休みも終えて、現国の授業を受けてウトウトしてる頃だろう。
僕は何をしてるかって?
朝からずーっと働き詰めでやっと1人中庭のベンチでパサパサのメロンパンを頬張っているところです。
「やぁ、サボり?」
頭上から聞こえた爽やかな声に上を見あげると、とってもいい笑顔を貼り付けた宇白先輩が立っていた。
「いえ…新歓の準備で、やっとお昼です。2時半から業者と打ち合わせなので、それまで」
「ふぅん、ちゃんと働いてるんだねぇ。偉い偉い!でももっと栄養のあるもの食べなよ」
そう言って宇白先輩は僕のメロンパンをひとちぎり掠め取っていく。
「あっ……」
「あはは、そんな可愛い顔しないでよいじめたくなる」
ははは、宇白先輩は面白い冗談を仰る。
ここは聞こえなかったフリしとこ。めっちゃ至近距離だけど。
「んー?無視ー?ま、良いけど。メロンパンもらったお礼にこれあげるよ。貰いもんだけど」
「こ、…これは!」
ぽん、と手のひらに乗せられた赤いパッケージのチョコ。
『ストレス社会に生きる貴方へ』
と書かれている。GABAだ。
貴方が辞任しなければこんなストレスも無かったんだよと思いつつも有難く受け取っておく。
「にしても新歓スプラトゥーンだっけ?面白いこと考えるね。この学校お坊ちゃんしか居ないから人にペンキをぶちまけるなんて考えないだろうし」
「あはは、だから品がないって怒られるかと思ったんですが…」
実際副会長には言われたけど。
でも、だからこそ。
『イケナイコト』を共有するこの感覚。ここの学園の人達はきっと味わった事が無いだろう。
そして友情、努力、勝利!それにこそ愛は生まれるのである!
「俺、出場するから、もし同じチームなら頑張ろうね」
「あ、はい!もちろん!運動苦手なので足引っ張りますけど…」
「もし違うチームで、俺が勝ったらさ、俺と付き合ってよ」
ん?
今なんと?
「よし、決まりね!敵だったら1番に御坂くんの事狙いに行くからよろしく!」
勢いよく立ち上がると、とても爽やかな笑みを見せてから宇白先輩は呆然とする僕を置いて立ち去って行った。
え、うそ。
否定も肯定もしてないのに決定...?
僕はストレスで胃に強い痛みを感じたので、勢いに任せてGABAを5粒ほど一気食いした。
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