人を殺したときの話

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特に、憎いとかそういう気持ちではありませんでした。 いえ、憎い気持ち、恨む気持ち、いなくなってくれたらいいのに…と、そういう気持ちはありました。それは普段からずっとそうです。 でも、その時はそういう気持ちではなかったです。どちらかといえば、珍しく穏やかな気持ちで、向き合えていたと思います。だから、二人で散歩に出るようなことをしたのでしょう。 普段なら、二人きりになるなんてとても考えもしませんし、口をきいたり、一緒に行動なんてしないです。はい、しないですね。 でも、その日はたまたま二人きりだったのです。何故だか。それで、二人で歩いて池のほとりまで来ました。いえ、意図してそこへ向かった訳ではありません。たまたま、歩いていったら池があったのでそちらに行ってみようか、という感じでした。そうやって歩いていって何やら話していましたが、ふとした拍子に、池の中に何かあるよ、とスッと屈んだんです。はい、そこの池の縁です。何が見えていたのか、私には分かりません。 その、屈んだ後ろに私は立っていました。 それで後ろから項の辺りを見ていたら、ふっと思ったんです。なんて無防備なんだろうかと。こんなに無防備では困るではないかと。 それで、その辺にあった櫂?ですか?あれはなんですかね?とにかく、棒みたいなものがあったんです。それで思い切り叩きました。 はい。私、意外と力があるんです。それで、思い切り叩きました。項というか、後頭部ですね。 一度叩き出したら、止められないです。とにかく、死ぬまで叩き続けないと、という気持ちでした。え?はい、殺してやる、というよりは一度叩いてしまったからには死ぬまでやらないと、という気持ちでした。 叩いて、叩いて、叩きました。 何故?何故でしょう? どうですか? あなたなら、止められますか? これ以上叩いたら死んでしまう、止めないと、と思えますか?もう、一度叩いてしまっているのに? 私には出来ませんでした。 とにかく、私の力が尽きるまで、叩きました。 快感、ではないですね。 憎しみでもありません。 とにかく、叩いたからには死ぬまで叩かないと、叩いて叩いて叩き続けないと、とただそれだけです。後戻りは出来ないのです。 叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて叩いて 死ぬまで。
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