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染みの展開。だからこそ春香は好き勝手に秋彦とケンカできる、と思っている。  だが、一方で春香はそんなワガママな自分の振舞いが許されるのは、秋彦が、大人、だからなんだな、と感じる時がある。  いや、優しいからかな。  甘い、のと、優しい、の意味合いが違うのは、うら若き乙女の春香でも峻別できる。そして、秋彦のそれは、優しさ、であると春香は確信している。少なくともそう願っている。さらに言うと、むしろ、甘い、と思っているのは自分自身に対してだった。  私がいつも秋彦に甘えているのよね。  そのような自覚が春香にはある。とは思っても、口数の少ないちょっとシャイな秋彦によく無茶振りをする。やれ、夜遅くに眠れないから眠くなるまで電話相手になれ、だの、ちょっとデートで会話が途切れたら何か面白い話をしろ、と強請(ねだ)るやら、とりあえず暇だから肩パンさせろ、等々。もはや弟をいじめる、いじめっ子の姉のような関係。それでいて春香は、自分を受け入れてくれる秋彦に頼りがいのある兄のような寛容さも覚える。それは秋彦自身の性格によるもの。  そうよ。秋彦が基本、温厚で穏やかな気性だからいけないのよ。だから私を甘やかしちゃってるのよ。そう、秋彦が悪い。こんなにカノジョに対して優しい秋彦が全面的に悪い。秋彦の恋愛教育方針、じゃなくて、恋愛作法かな……兎に角、恋愛態度に問題があるのよ。アレだったらどんな女の子だって甘えちゃうわよ。  半ば無茶苦茶な春香の恋愛論法だが、何故か自分の甘えの体質はカレシの秋彦のせいになってしまった。  そんな強引な思考アルゴリズムで春香は何とか得心しようとしたが、いまだにスマホはギュっと手に握ったままの状態。  そうよ、どんな女の子だって甘えちゃう。  それつまり、秋彦の優しさに触れれば、どんな女子も秋彦を好きになってしまう。秋彦の見た目とかではない。一度でも秋彦とコミュニケーションを取れば、異性ならば秋彦の良さを敏感に察知し、すぐに恋に落ちてしまう……と不意に春香の脳内で電流の如くそんな思いが走る。  恋は盲目、ではないが春香からすれば、そんな笑い話レベルの高スペックっぷりが、私のカレシである秋彦ならあり得る、と本気で誇大妄想気味に考えていた。  それを思うとこのようにケンカをしている時間が怖くなる。どっかの、女狐、が秋彦を
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