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度で、
「そう……だけど。ちょっと暇だったから、電話してみただけよ」
と返してみせた。本当は今すぐにでも、ゴメン、と謝りたいのにやはりここでも飾り気の無さを払拭出来ない。むしろ謝る所か、秋彦への想い溢れる本心を自ら告げたいのに、どうにも小生意気な態度で秋彦に接してしまう。秋彦と離れている間に積もり募っていた、再度、自らの秋彦への好きな想いを伝えたいのに素直になれない。出し抜けに春香は思う。やはり私は変われないのかも、と。
しかし、そんな春奈の思惑は露知らず秋彦は、妙にギコちなくモゴモゴと口ごもりながら話を続ける。
「そうか、そうなんだ。あ、いや、俺はその何て言うかアレでさ……」
「は? 何よアレって。今、何してるのよ」
「ええと、まあ、今、夜じゃん」
「夜よ」
「夜って危ないじゃん。だから心配じゃん」
「へ? 何言ってんのよ」
「あ、えーと、つーか、その、単刀直入に言うと、今、俺、お前の家の前に来てるんだよね」
「え!?」
春香は驚嘆半ばの声を発し、部屋のカーテンを開けてみた。街灯薄暗い電柱の側に、自転車に跨った秋彦の姿が、二階の春香の部屋から見下ろせた。どうやら秋彦は遠目から見ると、キョロキョロと挙動不審に映る。そんな秋彦の姿をしばらく黙って春香が見つめていると、部屋のカーテンを開けている春香の姿に秋彦は気づき、照れた感じで手を振った。
春香はそんな恥ずかしそうな秋彦の表情に微笑を零し、
「ちょっとキモいんですけど」
と一言淡白に返した。すると秋彦は電話越しで慌てて、
「ち、違うって。春香が思ってるようなストーカーちっくな事してるんじゃなくって……その、最近、俺らさ、あんま話をしてないなって思ってさ、ついついっていうか、たまたまっていうか、そう、ちょっとコンビニ帰りのついでだよ、そのついでに寄ってみただけなんだよ」
春香はあからさまに焦って喋る秋彦に、クスリ、と呟き笑みを浮かべ、
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