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「怖いんだ。怖いんだよ……! みんな変わっていくんだ! 俺自身も! 気付いたら、近くにあったものが何もかもなくなってる!!」
俺は悲鳴のように独白した。魂の軋む音がした。彼女のお気に入りだった白と水色のストライプが入ったワンピースに、無様な俺の涙がにじんで不格好な円を作りだす。
「寂しいんだ。一人にしないでくれ。どうか、置いていかないで……」
これはエゴだ。ただのエゴ。両親は自分よりも先に死ぬ。俺はただ一人でこの世に取り残されるのが怖いだけなんだ。本当に詩織のことを考えている訳じゃない。彼女に幸せになって欲しいのはウソじゃないけど、俺の側にいて欲しいんだ。
だから詩織は戻らないんだろう。ドラマのように、俺を抱き返してドラマティックに泣きながら名前を呼んだりなんてしない。記憶が戻ったりもしない。
全ては俺が招いたことなんだ。ここにいるのは詩織じゃない。自分本位な俺が積み上げた結果が、詩織の姿となってここにいるんだ。
奇跡なんて起こらない。
世界は優しくなんてない。
人間は本当にちっぽけで、
それなのにどうしようもなくワガママで、
いつも後になってからそれに気付く。
――ただ、一欠片の救いはあってもいい。
「……泣かないで」
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