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手を伸ばしながら、声をかける。
が、次の瞬間。急に視界ががたんと揺れて、宗太はその場に膝をついてしまう。
「……へ?」
自分の身になにが起こったかわからない。
よくわからないまま首を後ろに向けると、そこにはメイド姿の銀髪少女がいた。
再三言うが、本当によくわからない状況だった。
「ーーあくまで見ているだけにとどめようと思ってましたが、こうなってしまっては実力行使に出る他ありません。なにか御用があれば、私が代わりにお聞きしますが」
「……いや、それよりなにこれ? 俺、今どうなってんの?」
「拘束しています。身長差があるので、膝をつかせることで高さは合わせてますが」
少女が言った通り、宗太の体は完全に固定されてしまっていた。
手を後ろにクロスさせた状態で掴まれているので、動かせるとしたらせいぜい指先くらいなもの。宗太の中にさらに困惑が広がる。
「痛いですか?」
そうした張本人が、いきなりそんな事を訊いてきた。
「そりゃあ、こんだけしっかり掴まれてたら」
率直に思ったことを口にする。
すると、少女は「そうですか」と言って、手の力を緩めた。二の腕が少し自由になった宗太だったが、どうしてか拘束を振りほどく気にはならなかった。
「それで、あの方になにか御用ですか?」
「用というか、ちょっと話があって」
「それなら私が聞くと言ったはずですが」
「それだと意味ないんだよ。ていうか、あの子とはどんな関係だ?」
「メイドです」
少女は当たり前のように言う。
「メイドって、今はそういうコスプレが流行ってるのか」
「コスプレではありません。正真正銘のメイド、名付けて正なるメイドです」
「なんか急にうさん臭くなったな」
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