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一蹴すると、少女は無表情のまま手に力を込める。
痛くはないが、どうやら怒ってるらしい。終始、無表情なのでわかりづらいが。
「……なにをしているのですか?」
とーーそこで別の声が挟まれる。
宗太が顔を向けると、そこにはジト目でこちらを見る一千夏の姿があった。どうやら騒ぎを聞きつけて、こちらにやってきたらしい。
「お嬢様。いえ、この方が話があるとおっしゃったので」
「話?」
一千夏はさらに距離をつめると、宗太の顔を間近で凝視した。
そして、思い出したように。
「あなたは同じクラスの。えーっと……」
「北島だよ。北島宗太」
「そう、北島さん。あれ、どうして名前覚えてないんだろ……一応、声かけてきた人の名前は全員覚えたはずなのに……」
「それは俺が声かけたメンバーに入ってないからだろうな」
たしかに、声をかけてないのは事実だ。
だが、宗太が言おうと思ってたのはそういった事ではなく。
「鳳さんだっけ。昨日、ゲームショップの前で会ったの覚えてない?」
「ゲームショップ……」
人差し指をアゴに当てて、目をつむる。
一千夏の記憶の箱が次から次へと開いていく。やがて。
「……あっ!? もしかしてあの時の!?」
「ようやく思い出したか」
「赤い帽子をかぶって変なキノコ取ってた男子!」
「それはただのマ〇オだ」
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