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その返しに、一千夏の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
こんな有名なキャラを知らないとは。でも今の反応で、昨日の彼女とここにいる彼女が同一人物なのがハッキリした。
「どうして昨日と今日で、話し方違うんだ?」
「……」
いきなり核心を突く。
押し黙る一千夏だったが、数秒と経たず、その態度は瓦解した。
「……はぁ~~~~、ダメだ。やっぱりこのしゃべり方はわたしには合わん。息が詰まって仕方ない」
聞き覚えのある、歳を食った話し方。
制服姿であっても、その高踏的な佇まいは昨日と変わることがない。話し方が戻った途端、なおさらそう思った。
「新しい学校では話し方から直すと仰っていたのに、もう力尽きたのですか?」
「学校ではそうするが、この男にはすでに本性が知られている。なら気をゆるめるのは当然というだけの話だ」
「気を緩めるのは構わないですが、それがデフォにならないでくださいね。人間、続けるより諦める方が簡単なのですから」
気さくに話す二人。身内感あふれる遠慮のなさが、今の会話からも見て取れる。
しかし、それはそれとして。
「なぁ。そろそろ拘束解いてくれない?」
「どうしますお嬢様?」
「……解いてやれ」
密着していた少女の体が離れていく。
今度こそ両手がフリーになり、宗太は軽く手首をまわした。
「ふぅ、ようやく解放された……」
「すまないな。こやつーー蔡未〈さいみ〉はわたしのお付きでな。つまり、見た目通りのメイドというわけだ」
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