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再びはじまる距離感の近い会話。だが、これではもはやコントだ。
「……まぁ、大体の事情は分かったよ。鳳さんは普通になりたいから、あんな口調をしてたんだな」
「そうだ。ふっふっふ、ちゃんとした平民を表現できていたであろう?」
「いや、平民っていうかエセお嬢様みたいだったけど」
「エセ!? ただのお嬢様ではなくてエセなのか!?」
衝撃を受けたとばかりに、一千夏は一歩後ずさる。
「まぁ、エセかどうかはともかく、お嬢様の一世一代のデビューは、ものの見事に失敗したということですね。残念です」
「なんか全く残念そうではないが!? くそっ、どうしてこんな事に……」
その時、宗太の中にある感情が芽生えた。
危機感。これはもしかして、あまり関わっちゃいけないタイプのやつなんじゃなかろうか。
最初にゲームショップで会った時の衝撃。あれは間違いなく、人生で初めて経験する感情だった。
でも、それは考えてるのとは少し違った。
あれは決して一目惚れなんかではなく、危機感から派生した、ただの警告だったのだと。
「あ、そうだ。あの時は無理だったので、この機会に尋ねておくか」
そう言うと、一千夏は凛とした表情を宗太に向ける。
「げーむというのは、昨日のあれ以外にもーー色々な種類があったりするのか?」
かと思えば子供のような純粋無垢な瞳で、いきなりそんな事を訊いてきた。
「ゲーム? お嬢様、ゲームとは一体どういう事ですか?」
「うむ。実は昨日、外を散歩してたら偶然、そういった店を見つけてな。気づいたら、店の前から離れられなくなっていた」
「習い事を途中でほっぽり出して、ですか?」
「……しまった!?」
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