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「それで、先ほどの質問ですが……昔に何度かやった事があります。今ではめっきり機会も減りましたが」
「でも一応、やった事はあるんだな」
はい、と蔡未が肯定する。
その返事を聞いて、宗太は次に、一千夏の方に視線を向けた。
「そして、鳳さんはゲームをやった事がない。聞いたことはある。せいぜい、その程度の認識だ」
「うむ、そうだ」
強く頷く一千夏。
「……これは俺の個人的な考えだけどさ。いくら習い事をしても、世間っていうのは知ることはできない。ましてやこのご時世だ、ゲームを全く知らないのは問題があるんじゃないか?」
「問題とはどのような?」
「それこそ、クラスメイトと話す時とか……。今では携帯でゲームなんて当たり前だからな。全く知らないってなると、それだけでおかしなやつ扱いされる時もあるし」
宗太自身は経験してないが、前にそんな光景を学校内で見たことがあった。
単に娯楽というものに疎いだけで、輪に入れなくなる。そんなのは当たり前。
学校というのは、世間というのは。そんな驚くくらい単純な構造でできている。
「鳳さんは普通でありたいと思ってるんだろ? なら話し方以前に、その『普通』っていうのをまず知らないといけない」
「世間に疎いお嬢様が、手っ取り早くそれを知れる方法。つまり、それがゲームということですか?」
「少なくとも、俺の考えはそうだ」
蔡未の問いに、宗太がまっすぐな眼差しで答える
普通の定義は人によって違う。しかし、自分から普通であろうとする人間には、それ相応の理由があるはずだ。
なら、その興味心や努力を遮りたくない。まして、その矛先がゲームというジャンルなら。
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