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「お嬢様は、前々からゲームに興味があったのですか?」
「なんとなく知識として知ってただけだったが、本物を見たらますます興味が湧いた! わたしも亀を踏んだりしたい!」
その言い方は微妙に誤解される気がした。
「そうですか。ーーでは、間を取ってこうしましょう」
蔡未は両手をぽん、と叩く。これ以上ない名案を思いついたような表情で。
「責任を取って、宗太さんがお嬢様にゲームを教えてください」
「……は? どういう事?」
どこの間をとったらそうなるんだ?
動揺する宗太だったが、その提案に一千夏が同意の声を上げる。
「たしかに、それは名案だ。今のところ、学校でわたしの素を知ってる者は他にいないからな。指南役として、これ以上の適任者はいるまい」
「それはまだ転校初日だからだろ。これからどんどん話せる相手を作っていけば、素を出せる相手もいつか見つかるはずだ」
おかしな方向に着地しようとする話を、なんとか元の軌道に戻そうと試みる。
だが目の前にいるメイドとお嬢様は、すでに方針がまとまろうとしているようで。
「話せる相手だけなら、お嬢様のエセ丁寧語でも正直なんとかなります。しかしーー素を出せる相手、すなわち友達を作るには、話題の共有が必要。それがゲームだというのなら、宗太さんが教えるのは理に適ってると言えます」
「無理やり感がすごい! ていうか、最初にゲームの話したの俺じゃないんだけど!?」
頑なに二人の言葉をかわそうとする宗太だったが、それには理由があった。
人によって様々だが、一般的にゲームという単語で思い浮かべるのはアクションやRPGだろう。亀を踏むか、もしくは剣をとって魔王と戦いにいくか。
だが、宗太にとってのゲームはそれらとは大きく違う。
平たく言えば、ジャンルというやつが。
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