36人が本棚に入れています
本棚に追加
その日、北島宗太〈きたじまそうた〉は人生で初めて一目惚れを経験した。
厳密に言えば、それは一目惚れではないのかもしれない。ただこれまで生きてきた中で、現実の女子にここまで心を動かされた事はなかった。
きっかけは些細な事だった。いつものように宗太がゲームショップに向かうと、店の外のガラスケースに額を押しつけている子を見つけた。
背は宗太の肩上あたり。腰まで伸びたキレイな黒髪で、格好は紺を基調とした着物姿。コスプレなのか本気なのか。どちらにせよ、興味をそそられるには十分な要素しかない。
ガマンできず横からのぞき見ると、宗太は一瞬、目をつむりそうになった。
実際にまぶしかったわけではない。ただその少女が、あまりに現実離れした顔つきをしてたから。
端的に言えば、めちゃくちゃかわいかった。
「……?」
「あ、やべ」
少女がこちらに気づいた。
宗太はまるで下着泥棒を目撃された犯人のような声を出し、その場であたふたする。
「ーーのう。一つ聞いていいか?」
まさかの質問。
しかも、予想だにしなかった古風な話し方に、宗太はさらに動揺した。
「あ……はい、なんですか?」
「ここに映っているのが、いわゆるげーむというやつなのか?」
ガラスケースの中に置いてあるモニター。そこに映し出されているドット絵のキャラクターを、少女は指差す。
「一応。これは少し古いやつだけど」
「そうなのか。ふむ……」
最初のコメントを投稿しよう!