36人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも、俺がプレイするのってこういうジャンルだし……覚えるべき内容としては、明らかに不適格じゃないか?」
「しかし、ゲームという大本は変わりませんよね? だったら、それでいいんだと思います。そういう事にしておきましょう」
「ええ……」
論理も何もない。まさに力押し。
それで『オッケーわかった』なんて言う人間は、そもそも最初から考える事を放棄しているに違いない。
反論しようと、宗太は口を開きかけるが、
「のう、こっちのゲームはどんな内容なのだ? 表紙には小さい子がたくさん映ってるが?」
ギャルゲーのパッケージを手にする一千夏によって遮られる。
それ自体は妄想のような光景だったが、そこにあるのはきわめて普遍的なもの。
ゲームに対する純粋な興味。もしくは探求心。内容は別として、鳳一千夏という少女は間違いなく一歩を踏み出そうとしている。
宗太は悩みに悩みぬいた後、意を決した顔で。
「……くそっ、わかったよ。教えればいいんだろ教えればっ。ただし、言ったからにはマジでやるからな?」
「その言い方だと、なんだかイキりの入った若者みたいですね」
「決意して数秒後にやる気を削ぐ事言うな」
嘆息しつつ、頭の後ろをかく。
ーーかくして、この日から宗太の苦難の日々が始まったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!