36人が本棚に入れています
本棚に追加
▽
翌日。
教室に入った宗太を待ち受けていたのは、相変わらずの光景だった。
「鳳さんって、髪サラサラだよね。普段、どんな手入れしてるの?」
「特にはなにも。ただシャンプーする時は、髪が長いので少し時間をかけて洗ったりしてます」
「そうなんだ~。あ、ところで昨日のドラマ見た? 私、あれ超好きで、特に主演の俳優さんが~」
「ふふっ」
初日と同じで、一千夏の席の周りには人が集まっていた。
その中で一人、すごい勢いで話してくる女子がいて、一千夏はその対応に追われていた。
「……やっぱりすげー違和感」
「違和感ってなにがだ?」
いつもの陽気な声で、孝介が後ろに立っていた。
「よっ、おはよ。朝からなんか考え事か?」
「考え事っていうか……世界は時に残酷だなと思って。人間、誰しも表裏があるものなんだな」
「なんか変なものでも食ったか? お前らしくないぞ」
「俺はいつも大体こんな感じだよ」
そう、こんな感じ。
宗太はギャルゲーというジャンルを好んではいるが、それを現実に反映したりはしない。
ゲームはゲーム。現実は現実。プレイする側はあくまで人生をのぞかせてもらってるだけで、主人公自身ではない。
そう、自分自身では決してーー。
「はいみんなー、席について―」
チャイムの音とともに先生がやってきて、いつものHRがはじまる。
しかし、そう思われていた朝の時間は。
「えー、実はまたまたいきなりなんですが……今日、このクラスに転校生がやってきます」
最初のコメントを投稿しよう!