第1章 思ったようにいかない。それが人生という名のクソゲー

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「鳳さんってスタイルよくて、運動とかもできそうだよね。鳳さんと同じクラスなら、きっと体育大会も優勝間違いなしなのに」 「ふふっ」 勝手な期待を抱く別クラスの女子。それに対する一千夏の微笑み。 なんだかより一層、騒がしさが増した気がする。実際、教室内の人口密度はだいぶ増していた。クラス二つ分、とはいかずとも確実に1.5倍は増えている。 それは別に構わないのだが、秘密の共有と、予期せぬ契約がふと頭をよぎる。 鳳一千夏という世間知らずなお嬢様に、ゲームという娯楽を教える。ただしジャンルはギャルゲー。 ……やはりどこかおかしい。おまけに、その具体的な方法も決まってないと来た。 誠に遺憾だが、約束してしまった以上はやるしかない。とにもかくにも話をするために、放課後がやってくるのを待つ宗太だった。 だが想定より少し早く、そのタイミングはやってきた。 昼休み。教室を出ていくクラスメイトの声に混ざるようにして、耳元で聞きなれた声がした。 「ーー屋上、階段前」 こそばゆさに後ろを振り向くと、そこにはもう誰もいなかった。 だが、あれはたしかに蔡未の声だった。声量のわりに聞きづらさのない声。声が凛としている、とでも言うのだろうか。 「屋上ね……」 言いながら教室を見渡すと、蔡未だけでなく、いつの間にか一千夏も姿を消していた。 なるべく目立たないように教室を出て、宗太は指定された場所に向かう。 階段を上がり、一年の教室がある三階を超えてさらに上。昼であっても薄暗さが残り、ポツンと存在する鍵付き扉がどこかさみしさを感じさせる。 そんな情緒じみたことを思いながら、宗太は周囲を見回して。
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