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「誰もいねぇ」
集合場所のはずなのに、そこには宗太以外誰もいなかった。
なんとなしにドアの方を見てみる。すると、すぐ横の壁がわずかに盛り上がってるのに気づいた。
色の違うその部分をめくると、出てきたのはセロテープで貼りつけられた鍵。どうやら、色のついた紙で鍵を隠してあったらしい。
「階段前……じゃなくて、やっぱり屋上って事か?」
手に入れた鍵でドアを開け、屋上に足を踏み入れる。
そこには案の定というか予想通りというか、一千夏と蔡未の姿があった。
「遅いぞ、なにをやっていたのだ?」
文句を垂れる一千夏は地面にシートを引いて、優雅にお昼を満喫していた。
真っ黒な重箱をつつくその姿は、まるでここが学校ということを忘れるくらい、とにかく違和感がすごい。
「宗太さんはお昼は持ってきてないのですか?」
「教室からまっすぐ来たからな……それにいつもは学食だし」
「なるほど、ではちょうどよかったですね」
蔡未は座った体勢のまま、巾着から取り出したお箸を宗太に手渡す。
「急に待ち合わせを決めたのはこっちなので、宗太さんもどうぞ遠慮なく。お口に合うかはわかりませんが」
「これ、お前が作ったのか?」
「はい、こう見えて家事は得意なので」
「こう見えてって……いや、今はメイド姿じゃなかったか」
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