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少女は腕を組み、端正な顔を悩ましそうな表情で崩した。
そこで宗太は確信した。この子は自分の妄想だと。
そもそもこんな可愛い子が現実にいるわけないし、立ち振る舞いもどこか浮世離れしている。
そしてなにより、ゲームというものを見たことがない……っぽい。このご時世、遊んだことはないにしろ、ゲームを見たことがない人種が果たして存在するのだろうか。
しかも、ここに映ってるのは有名にもほどがあるゲームだ。亀を踏み、キノコを取ってパワーアップするやつ。世代が違えど、誰しも一度は見たことがあるだろう。
ゆえに、この子は存在しない。初めての感情にやられてしまっていた宗太は、そんなよくわからない思考に支配されていた。
「む? しまった、もうこんな時間ではないか! またサイミのやつに小うるさく言われてしまう!」
「えっ? あ、ちょっと」
宗太がなにか言う前に、少女はその場から去って行ってしまった。
その場に取り残される。妄想は消えたはずだが、どうしてかモヤモヤが残る。それに今の去り際の勢い……あれは妄想と違い、明らかな現実味があった。
ともあれ、そんな事はいいとして。
「予約したゲーム早く取りにいかないと」
目的の品を手に入れるために、宗太は自動ドアをくぐり、ゲームショップに入っていった。
次の日。通学路を歩く宗太の肩を、ふいに強い振動が襲う。
「おはよ、相変わらず眠そうだなお前は」
「普通、朝は眠いに決まってるだろ。逆にテンション高いやつの方がおかしいんだ」
「ははっ、それもそうだ」
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